しばらくの沈黙の後、ふと視線を落としていった先に、きつく握り締められて微かに震える手に気付き、あたしは顔を上げた。

「先輩……最後まで、言って下さい……。“抵抗もなかった”って……じゃあ今は……?」

わかりきったような答えを問うあたしに、高遠先輩は笑う事もなく、ただ視線を落としたまま口を開いた。

『今は、抵抗あるよ、君が真っ直ぐだから……。……歪んだ俺にはね、真っ直ぐすぎる君が怖いんだ……』

悩ましげに瞳を閉じて、真っ直ぐなあたしが怖いと言った高遠先輩は、ゆっくりと顔をあげると困ったように笑う。

『君がね、俺を好きだと言う度に……俺は自分のした事を悔いて、追い込まれるんだ』

「……それは、どうしてですか……?」

そう問うと、高遠先輩はまた瞳を伏せる。

どうしてまた、そうやってごまかそうとするんですか……。

あたしが聞きたいのは、後悔してるとかそういう言葉じゃない。

本当に聞きたい言葉は、あたしをどう思っているかなのに……。

「あたしが……あたしが悪いんですか……? あたしが先輩を好きになったから、それを伝えるからいけないんですか……!?」

好きだから、好きだと伝える。

そうやって素直に想いを伝える事が、貴方の傷を癒やすと……あたしはそう思っていたのに。

なのにそれが貴方を追い込んで、苦しめていたというの……!?

「答えて下さい……、先ぱい……っ!」

自分が想いを伝え続ける事が、高遠先輩に信じてもらえる近道だと思っていた。

だから何度も何度も、好きだと想いを伝えて、貴方を傷付けたりはしないと伝えて……。

本当はそれが、間違いだったの……?