少し潤む瞳で見つめ返すと、高遠先輩はそのままポツリと一言呟いた。

『那智は真っ直ぐ過ぎるんだよ……』

その言葉にあたしが小首をかしげると、高遠先輩は困ったように笑って、さらに言葉を付け加える。

『もっと、那智が普通の子ならよかった……。そしたら俺は、ここまで君を傷付けなかったのかもしれない……』

言葉を呟かれる度に、高遠先輩の言っている意味がわからなくなってくる。

あたしが普通の子ならよかった?

あたしが普通だったら、傷付けなかったのかもしれない……?

普通の子って……どういう子の事を言うの……!?

全然意味がわからなくて、どうする事も出来ないあたしは、ただ真っ直ぐに高遠先輩を見つめた。

『はは……ごめん、意味がわからなかったか……。いいんだ、わからなくていい……君はそのままでいいんだよ』

「っ……全然、よくないです……っ。ちゃんと説明して下さい、ごまかしてばかりなんてずるいです……!」

隠して、嘘をついて、ごまかして……、高遠先輩はいつもそう……。

大切な事も言わない、説明もなしに突き離す事ばかりで、その度にあたしを傷付けて。

だからちゃんと言って欲しい……、どんな些細な事でも言ってくれなきゃ、あたしはただ哀しいだけだから……。

『……もう気付いているだろう……? 俺は酷く歪んだ人間だ……、君を傷付ける事になんの抵抗もなかったんだからね』

自嘲気味に笑うとまた俯いてしまった高遠先輩を、あたしは相変わらず真っ直ぐに見つめていた。