「えっと……あたし、友達とはぐれちゃって……」

バカだって思われちゃうかな……、この前は転んだし、今日ははぐれてるだなんて。

それに高校生なのに、はぐれて泣きそうになってた訳だし……呆れられちゃうかな……。

そう思うとなんだか恥ずかしくて、惨めで、あたしはだんだん視線が下へと向いていった。

だけど頭上からの優しい声が、あたしにまた上を向かせる。

『友達が来るまで一緒に居てあげるよ、……ひとりだと心細いだろう?』

「えっ……」

『こういう時はあまり動き回らない方がいいんだよ。君みたいな子は特にね、人込みに紛れそうだし』

「………」

『……ごめん、バカにした訳じゃないよ? ただ君を見ていたらそんな気がして……って、これじゃあバカにしているように聞こえるかもね……』

そう言って苦笑いを浮かべる高遠先輩に、あたしは何も言えなかった。

……ううん、正確には、何か言わなきゃと思ったんだけど、言葉が出なかった……。

『とりあえず座ろうか、立ってるのも疲れるし』

そう言うと高遠先輩は、あたしの頭を軽くひとつ叩いてから、ホームの椅子の方へ先に歩いて行った。

あたしはその後ろ姿を見失わないように、急いでついて行く。

高遠先輩は4つの椅子の一番端に座ると、その隣にあたしを手招く。

……だけど隣に座るのは気恥ずかしくて、あたしはひとつ空けて、高遠先輩の隣の隣に座った。

『……ここひとつ空けるんだ?』

「っえ、あ……だ、だって……」

『ははっ、いいよ別に、気にしないで』

高遠先輩はそう言うとあたしから視線を外し、遠くを見つめた。

失礼だったかな……椅子、ひとつ空けちゃうなんて。

だけど男の人が隣に座るのなんて、電車の座席でも少し嫌だし、だからやっぱり隣には座れない……。

あたしは申し訳なさで俯いて、自分の膝の上にのせた手を見つめた。