今から五年前、
タケシが中学三年の時、
父コウイチは家を出て行きました。
そうさせたのは
タケシでした。
タケシが小学六年の時、
HIVに感染していた母、
ユウコはエイズに発症し、
命を落としました。
タケシは、エイズで
母を亡くしたショックと、
いずれ自分もエイズに
発症して死ぬんだ、
という恐怖におののきました。
なぜ、自分はこんなにまで、
このHIVに
悩まされなければいけないのか、
それを考えた時、
その矛先は父コウイチに
向けられました。
 コウイチもまた
HIVに感染していました。
タケシが子供の頃、
感染した経緯について聞いても、
いつも母ユウコは、

「巻き込んでしまって、本当にごめんね。」

と謝るばかりで、父もまた、

「本当にごめんな。」

と、経緯について、
両親は固く口を閉ざし、
タケシに話しませんでした。
しかし、それを知る時が来る、
ある事件が起きました。