カオリは早速、
大家さんに鍵を借りると、
タケシと初めて出会った、
タケシの部屋の
向かいのアパートに入りました。
ゆっくりと窓に向かうと、
窓のヘリに肘をつきました。

「ああ、懐かしい…、
まだあれから半年位しか
経ってないのにね。」

ジッとタケシの窓を
見つめました。
天気が良いからか、
丁度窓が開け放たれていました。

「こうして見てると、
チラッ、チラッ、って、
タケシ君が顔出しそう。」

カオリはクスっと笑いました。
タケシと出会った時を
思い出していました。

「タケシ君…。」

思い出せば、思い出す程、
寂しさも募り、
カオリの目から
一筋の涙がこぼれました。

「いけない、
また悲しんじゃった…。」

カオリは涙を拭いました。

「いつまでも
泣いていられない。」

バッグから紙と
ボールペンを取ると、
タケシへの別れの
言葉を書きました。
“私の“見る世界”を
広げてくれたタケシ君へ 
これから、この目で
色んな物を見て、
色んな感動があると思うと、
本当に嬉しいす。
でもやっぱり
タケシ君がいないのは寂しい。
この辛さを
乗り切るのには、
時間が掛かると思うけど、
頑張ります。
この目が生きている限り、
私の心の中で
タケシ君も
生きているのだから。

本当にありがとう 
 さようなら また会う日まで“

カオリは手紙を
書き終えると、
それを紙ヒコーキにしました。