その言葉に、
コウイチもカズヨも、
カオリが新底
タケシを好きでいた事を
実感しました。

「タケちゃんも、天国で
喜んでいる事でしょうね、
カオリちゃんの目が
見えるようになって。」

「ええ、これ以上の
贈り物はないです。」

カオリは目を閉じ
両目を易しく撫でました。
タケシの事を思い出したのか、
カオリの目から
じんわり涙が
こぼれそうになりました。
カオリは慌てて
気を取り直し、
立ち上がりました。

「あっ、私そろそろ行きます。」

「あら、ゆっくりして行きなさいよ。」

「あの…、ちょっと
寄りたい所があるんですけど…。」

カオリはコウイチの方を見ました。

「ん、どこだい?」

「タケシ君の部屋の、
アパートの向かいの部屋、
私がカウンセラーとして
一か月間入らせてもらっていた
あの部屋なんですけど、
ちょっとだけ入らせて
もらいたいんですけど…。」

「ああ、まだ空家だし、
大家さんすぐそこにいるから、
言えば入らせてくれるよ。
何か忘れ物?」

コウイチが聞くと、
カオリは照れ臭そうに
答えました。

「ええ、ちょっと懐かしくて…。」

その愛くるしい
カオリの笑顔に、
コウイチもカズヨも微笑みました。