それを聞いて、
コウイチは申し訳なさそうに
答えました。

「ゴメンよ、タケシの
精神不安定を演じさせる為に、
死が迫る恐怖と共に、
別れのショックを
理由付けしたかったんだ。
実際のタケシは、
死の恐怖を微塵も
感じていなかったんだ、
大した奴だよ。
カオリちゃんの目を
治してあげたいって、
それだけが
心残りだったんだよ。」

カオリはその言葉に
うなずきました。

「うん、でもコウイチさんが
病院にお見舞いに行くように
促されて行った時、
何か安心したの、
タケシ君の私を見る目が
すごく優しくて、
あっ、精神不安定の演技は
すごく上手で
気が付かなかったんですけど…。」

ここでカズヨが
首を傾げました。

「タケシのカオリちゃんを
見る目?」

「あっ、勿論
見えないですけど、
私には、人の心の色が
見えるんです。
やさしい心の人は
体全体が黄色くぼんやりと、
怒りを感じている人は
黒く光っている
という具合に、
色んな色があるんです。」

「そりゃー、初耳だなー、
目が全く見えない
訳じゃないんだな。」

コウイチは関心した
ように言いました。

「タケシ君は相変わらず
黄色く光っていたの、
とても優しい黄色い
光を放っていたの、
あんなにナイフを突き付けて
興奮している筈の人が。
でも、そんな計画があるとは
思っても見なかったけど、
私をまだ好きで
いてくれてるんだなっ、
ていうのは感じて、
本当に私と一緒に死んで
欲しいのかと思ったの。」