タケシの葬儀が、
カズヨの自宅でしめやかに
営まれました。
喪主を務めたコウイチは、
悲しんでいる
間も無い程の忙しさから、
疲労が募っていましたが、
気丈に喪主をこなしました。
葬儀を終え、
親戚達も帰って行き、
家に残ったのは、
カズヨとコウイチと
カオリだけになり、
やっと静けさを
取り戻しました。

「コウイチさん、
ごくろうさまね、
一息入れましょ。」

カズヨがお茶の準備をし、
コウイチに座るよう
促しました。

「あっ、私やります。
おばさんも座って下さい。」

カオリがそそくさと動くと、
カズヨはカオリの
肩に手を置きました。

「いいから、あなたも座ってて、
本当にありがとうね、
色々、お手伝いさせちゃって。」

「いえ、そんな…、すみません…。」

確かに、ソファに
座らせられたカオリは、
どっと疲れを感じていました。

「ああ、おいしいー。」

しみじみと言うカオリに、
コウイチも静かに
うなずきました。

「ホントねー、悲しんでいる
暇もなかったものねー。」

カズヨはそう言って、
お茶をすすりました。
この時、三人共タケシが死んでから、
初めて落ち着いた
時間を過ごせたのです。

「そう言えばカオリちゃん、
どうだい、目の調子は?
目で見た風景は
想像と違ってたかい?」

コウイチがお茶菓子を
ほうばリながら聞きました。