この計画をタケシの
練ったプラン通りに
進める振りをして、
肝心なところでは、
自分が身代りになろうと。
それは、タケシでなく、
コウイチ自身が命を断ち、
カオリに角膜を
提供してあげようと、
そう考えていました。
タケシと、目が見えた
カオリが少しの間でもいいから、
一緒に過ごさせてあげたい、
それが、タケシへの父として、
してあげられる事であり、
HIVをうつしてしまった、
せめてもの罪滅ぼしだったのです。
しかし、コウイチと
中澤医師がタケシと
カオリの元に着いた時、
薬剤室のドア越しに呼び掛けても、
返事がありません。
異変を感じたコウイチは、
ドアを蹴破ると、
一足遅く、そこには、
憐れも無いタケシの
姿がありました。
タケシは自らの手首を切り、
血が鼓動と共に
ドクドクと床に流れていました。

「タケシッ、死ぬなっ、
死なないでくれっ。」

コウイチはタケシを
抱き抱えました。
タケシはまだかすかに息がありました。

「父さん、カオリさんの事、
後は頼んだよ、
最後に父さんに会えて良かった…。」

その力の無い声に、
見る見る内に“生”を
失われていくのが、
コウイチにも分かりました。

「ああ、なんで、どうして、
俺が死ななきゃ、俺が死ななきゃならないのに…。」

「婆ちゃんに、
ごめんねって言ってね…。」

「タケシッ。」

コウイチは、泣きながら、
タケシの名を呼び続けました。