とは言え、タケシは、
自分が死んだら
カオリに角膜を
提供してあげたいと
考えましたが、
平等に提供する
という理由から、
誰に移植するかを
指定する事は出来ないのです。
更には、タケシの場合、
HIVという感染症を
患っている為、
角膜移植によって、
移植者にHIVを
感染させてしまうという
確率は極めて低いにしろ、
感染させてしまう
恐れがある可能性が
ゼロではない為、
献眼者として
登録すらできないのです。
 ならば、自分が死んで
強引にカオリに
角膜を移植させるしかない、
そう考えたのです。

 まず、計画は
カオリを騙す事から
始まりました。
ストレートに、自分が自殺して、
角膜を提供したい
と言っても、カオリは
そんな事は許さないでしょう。
丁度、タケシは、
カオリの母マリコからの
誘導もあり、カオリに対し、
一方的に別れを
告げたところでした。
カオリから
やり直したいと、
紙ヒコーキを飛ばして
来られた時は、
酷く心が揺らぎましたが、
それでも、タケシは
頑なに、カオリとの
交際を断ち切ったのです。
そして、次にタケシは、
精神不安定者を演じました。
精神不安定が
周りに浸透してくると、
コウイチがその事を
カオリに電話で伝え、
タケシの所へお見舞いに
行くように誘導しました。
 タケシは、病院に来た
カオリに一緒に死ぬ事を
促します。ここでタケシは、
カオリを試してもいました。
果たして自分と
一緒に死んでくれるのか、
どこまで自分を
愛しているのか、
もしも、カオリが
タケシとの死を拒んだら、
この計画は遂行できないのです。
カオリが自分との
死を望んでくれてこそ、
タケシもカオリの為に
死ぬ事が出来るのです。