「さあ、
ここからが本番だ。」

タケシは、携帯から
一本の電話を入れました。
その相手は、
父コウイチです。

「こっちは準備完了だよ、
早めによろしく。」

タケシはそう言うと、
カオリの寝顔を見ました。

「ごめんね、カオリさん、
こうでもしないと
ダメなんだ…。」

そして、タケシは、
コウイチが来るのを
ジッと待ちました。

 一方、そのころ
コウイチは、とある
大学病院に来ていました。
コウイチは普段の
身なりとは一変して、
黒のロングコートに
サングラスを掛け、
うつむきかげんに、
病院に足を踏み入れました。

「俺、悪人に見えるかな…。」

そう呟きながら、
中を見渡し、そこに
いる名医で名高い、
ある医師のいる
眼科を目指しました。

「ちょっと、そこの
看護婦さん、
眼科の中澤医師の所に
案内してもらいたいんだけど。」

コウイチは看護婦さんの
案内で、食堂で昼食を取る
中澤医師の所に
連れられました。

「中澤先生、すみません、
急な用があるとかで、
男性の方が
みえてるんですけど…。」

中澤医師は五十代半ばの
頭の禿げた、
優しくて評判の医師です。

「えっ、困ったな、
後に出来ないのかい?」

すると、看護婦の
後ろにいたコウイチが
顔を出しました。