「何だろ、黄色の風を感じるって…。」

その詩的な文章に、
タケシは、自分が覗いていた事を嫌がってはいない事を感じました。
早速、タケシは机に向かい、
紙を取り出しました。

“すみません、覗いたりして、
窓から見えるから気になって、
友達になれたらいいな、って思ったんです。
俺、タケシっていいます。
よろしくお願いします”

そう書くと、それを紙ヒコーキにして、
そーっと窓に近づき、
彼女の部屋を目指して飛ばしました。
風が吹いていなければ、
狙いを外す事はそうなない、
距離と窓の大きさです。
紙ヒコーキは、吸い込まれるように、
彼女の部屋へと入って行きました。
タケシは、彼女がどんな気持ちで
手紙を読んでいるのだろうか、
気になって仕方がありません。
とはいえ、あからさまに、
窓から様子を伺うような度胸もなく、
十分程じっとしたのち、
相手の状況を一目見てみようと、
そーっと窓から顔を出してみました。

「あっ。」

タイミングが良いのか悪いのか、
丁度彼女も窓際に顔を出した所でした。
しかも、彼女のその手から、
紙ヒコーキが丁度飛ばされた瞬間だったのです。
その紙ヒコーキは、
ゆっくりとタケシのいる部屋を目指して、
飛んで来ました。
彼女は、一瞬微笑むと、
姿を隠してしまいました。
タケシは、飛んで来た紙ヒコーキをキャッチしました。
おぼつかない手つきで、
紙ヒコーキを開きました。

“わたし、字がヘタだから、
メールしよ、わたしはカオリです。よろしく”

そう書かれたあとに、
パソコンのアドレスが書かれた
小さな紙が貼られていました。
タケシは、喜びのあまり飛び跳ねました。
早速、パソコンに向かい、
メールを打つ準備を始めました。
彼女の書いた字は、
確かに覚え立ての小学生が書いたような
不安定な字です。
タケシは、綺麗な大人の女性という
イメージが焼き付いているだけに、
そのギャップに驚きつつも、
逆に、それが親近感を
覚えるものでもありました。