「どうしたのタケシ君、
何やってんのっ?」

「それ以上来るなよ、
俺本気だから。」

婦長はピタリと止まりました。

「どうするつもりなの?」

「薬剤室に入れさせて
もらえば、誰も傷つけないよ。」

婦長は、ナイフを
チラつかせるタケシと、
そのギラついた眼差しに、
タケシが本気で
ある事を悟りました。

「分かったから、
乱暴はしないでちょうだい。」

婦長は薬剤室の鍵を取り、
タケシを部屋の中へと
案内しました。

「鍵をよこしてっ。」

婦長は恐る恐る
鍵を手渡しました。

「早まっちゃ駄目よ、タケシ君。」

その言葉に反応しないまま、
タケシはカオリを連れ、
薬剤室に入り、ドアを閉めました。
鍵を掛けられた事を確認すると、
婦長はすぐさま
振り返りました。

「大変よ、警察を呼ばないと。」

そう呟きながら、
電話に向かって
駆け出していました。

「これで、誰にも邪魔されないな。」

タケシはナイフを
そばにあった棚に置きました。

「タケシ君、何か、薬を探す気なの?」

「あ、うん、ネットで調べて
知ったんだけど、一錠飲んだだけで、
苦しまず楽に死ねる薬があるんだよ。」

「そんな薬置いてあるの?」

「うん、えーっと、えーっと。」

タケシは薬棚をくまなく見渡し、
やがてピタリと止まりました。

「これだっ。」

小さな瓶を手に取りました。
手のひらに二錠落とすと、
前に差し出しました。

「本当にいいの?俺の為に。」

カオリはタケシから
錠剤を受け取りました。

「うん、死ぬ程好きだから。」

今、死のうとしている二人にとって、
そのカオリの言葉は正に
ピッタリであり、
二人共、つい
吹き出してしまいました。