タケシはカオリと
別れる決意をしました。
シンヤの母親や、
カオリの母マリコからの、
病気への差別に
憤りを感じながらも、
確かに感染を恐れる
気持ちも分かります。
そして、何よりこのまま
カオリとの交際を続けていれば、
いくら気を付けていても、
カオリがHIVに感染する
確率は高いのが確かです。
別れる事がカオリの為なのだと、
感じていたのです。
 タケシは、カオリに
電話で別れを告げました。
その別れは、あまりにも
あっさりと、それでいて、
タケシからの一方的なものでした。 
 それからというもの、
またタケシに、カオリと
出会う前のような
引きこもり生活が
戻ってしまいました。
そんな中でも救いと言えるのは、
新聞配達はやめずに
続けていた事でしょう。

「付き合うのに疲れたから、
別れて欲しい、もう
会うのはやめよう。」

そうタケシから一方的に
別れを告げられた時、
カオリには疑問しか残らず、
納得がいきませんでした。
あれ程、二人での楽しい
日々が続いていたのに…。
しかし、カオリがどんなに
連絡を取ろうと試みても、
タケシは部屋に
引きこもったまま、
梨のつぶてでした。
 そんな状態が何日か
続いたある日、
この日は天気がカラッと晴れ、
タケシの部屋の
窓は開け放たれていました。
その窓からふんわりと
風に揺られ、紙ヒコーキが
部屋の中に飛んで来ました。