タケシは、コウイチから
離れるとすぐに、コウイチから
受け取った、連絡先に電話し、
その場所と、訪ねて良いかの
確認をしました。
そして、その足で、
そのカオリの勤務先である、
介護施設“さゆり苑”へと
向かいました。
 
“さゆり苑”は
二十人程の成人身体障害者が
通う養護施設です。

「こんにちはー、さっき
電話した者ですけど…。」

遠慮気味に入ると、
おばさんが一人やって来ました。

「あら、あなた伊藤君…。」

そう言われ、タケシも気付きました。

「あっ、シンヤ君のお母さん…。」

その人は、タケシの
高校のクラスメートの、
シンヤの母親でした。

「どうしたの?何か用?」

不思議そうな顔でタケシを見上げました。
その時、後ろからもう1人
おばさんが駆け寄って来ました。

「ああ、カオリちゃんに
用があるって人ね、どうぞー。」

タケシは、そのおばさんに
奥まで導かれました。
ホールのような広間で、
障害者達が、トランプや
フラフープで遊ぶ者、
テレビを観る者等、
それぞれ自由に楽しんでいる事が伺えます。
タケシは、その中に、
積み木で遊ぶ、知的障害者の
男性に付き添っているカオリを
見つけました。
すると、丁度カオリの方も
タケシの方を振り向きました。