「父さんが仕組んだ
っていうの?」

タケシはコウイチを睨みました。

「すまない、でも
お前の為を思って、
お前も二十歳だろ、
もっと人と知り合って
青春を満喫して
もらいたいと思って…。」

そこに、タケシは口を挟みました。

「余計なお世話だっ、
どうせ俺は恋愛なんか
できない体なんだっ。」

「そんな事ないさ、
HIVは、気を付ければ
人に感染しないんだから。」

「あんたに言われたくないよっ、
俺をこんな体にいておいてっ。」

それを言われては、
コウイチには何も
言い返せませんでした。

「そうだな、本当にすまない。」

「だったら、直接、風俗嬢でも
寄こしてくれれば良かったよ、
AV男優だったんだから、
知り合い、いるんじゃないのっ?」

タケシは皮肉を込めて言いました。

「いや、そんなつもりで
カオリちゃんを寄こしたんじゃ…。」

また言い終わる前に、
タケシが口を挟みました。

「おかげで、人がどんなに
苦しい気持ちになったか
知ってんのかよっ?」

コウイチはその言葉にハッとしました。

「タケシ、カオリちゃんを
好きなのか…。」

しかし、タケシは何も答えず、
その場を去りました。

「タケシーッ。」

行こうとするタケシを
コウイチが追って来ました。
タケシは振り向きました。

「何だよーっ、もうあんたに用はないよ。」

「これだけ受け取ってくれ、
これ、カオリちゃんが働く
介護施設の連絡先だ。」