「ああ、まあ中に入れよ。」

コウイチは、とまどいつつも、
笑顔を見せました。

「ここでいいよ。」

そう言って一呼吸置くと、
続けました。

「ばあちゃんの家の、
裏のアパートの部屋、
父さんの名前で借りてあった事、
知ったんだけど…。」

コウイチは表情を曇らせました。

「その事か…。」

タケシはすかさず
聞き返しました。

「なんで父さんが
あの部屋を借りてるの?
カオリさんを知ってるの?」

コウイチは、頭を掻き、
気まずそうに答えました。

「カオリちゃんは…、
あの子は、
カウンセラーなんだよ。」

「カウンセラー…、
それって、俺の…?」

その問いに、
コウイチはとまどいつつも
答えました。

「そうだ、部屋に
閉じこもりっきりのお前に、
もっと人と接してもらいたいと
思ってな。
前にばあちゃん通して、
カウンセラー頼む事を
聞いてもらったんだが、
断っただろ。だから、
カオリちゃんにあの部屋に
引っ越してもらって、
カウンセラーって言う事は
隠して、自然な形で
お前に接するように、
頼んだんだ。」