コウイチは、テーブルに
手を付きました。

「本当にすまない、
タケシ、すまない。」

深々と頭を下げる
コウイチですが、タケシは、
一向に怒りが治まりません。
更には悲しさが
込み上げて来ました。

「俺、もうやだよ…。」

タケシの目からは、涙が溢れていました。

「タケシ、ごめんな。」

コウイチの目も
赤く染まっていました。
しかし、タケシは
その言葉に反応する事なく、
店を出ました。
そんな沈みきったタケシを
コウイチは追いかける事が出来ず、
ただ自分の情けなさと、
自分が撒いた家庭の不幸を
悔やむしかありませんでした。
 タケシが、コウイチと
二人暮らしをするアパートから
家出をしたのは、
それから間もなくの事でした。
タケシが向かった先が今も住む、
隣町にある、母方の祖母、
カズヨの家なのです。
その日以来、タケシは学校に行かず、
父コウイチとも会わず、
カズヨの家での
引きこもり生活が始まったのです。