「なんだ、あの子は、
刺激過ぎて、
血でものぼせあげたか?」

店のおじさんは、
そんなタケシを見て、
怒る気も失せていました。
 タケシは、その足で
父コウイチが経営する
喫茶店へと向かいました。

「よおタケシ、どうした?」

夕方五時、店は準備中で
客はいませんが、
コウイチはこれからの
夕飯時に備え、
せっせと準備を進めていました。
ですが、息子の突然の訪問にも、
明るく出迎えました。

「ちょうど、一息入れようと
思ったところなんだ、
座れよ、ジュースでも飲むか?」

しかし、タケシは
イスに座らず、
首を横に振りました。

「父さん、AV男優だったの?」

その顔は真剣でした。
そして、陽気だった
コウイチも瞬時に顔を強張らせました。

「そんな事…、どこで知った?」

「友達が偶然、ビデオ屋で…。」

タケシは一呼吸置きました。

「本当なの?」

睨むように、父を見上げました。

「ああ…、父さんが若い時な、
今考えてもバカだったよ、
まさかタケシに知られちまうとは…。」

タケシは、ギュッと
両手を握りしめました。

「最低な父親だ。」