「いや、俺も見たけど、
確かにそっくりだったぜ、
ちょっと若かったけど、
俺、お前の父ちゃんと
何度も会った事あるし…。」

タケシは、そう簡単に
自分の父親が、
アダルトビデオの男優だなんて
事を信じる訳にはいきません。
 その日の放課後、
タケシは、シンヤと
トモノリと共に、
そのレンタルビデオ店へと
向かいました。
タケシは、そのビデオの
パッケージを見るなり、
頭が真っ白になりました。
確かに、表紙正面のAV女優の
両隣に立っている男性二人の内、
一人は父コウイチに
そっくりです。
しかも裏面には、
丁寧に「伊藤コウ」と
出演者の名前が書かれていました。
伊藤浩一の本名を
もじったようなその名前は、
偶然とはいえず、
コウイチだという事を
決定づけるしか
ありませんでした。

「コラーッ、
また入ったのかっ、
このエロガキどもーっ。」

「やべっ、またおっさんだ、
逃げるぞっ、タケシッ。」

シンヤとトモノリは、
そそくさと店を出て行きました。
その後にタケシも続きましたが、
急ぐ素振りもなく、
ただ一点を見つめたまま、
ゆっくりと店内を出ました。