「───似合う?」

「うん、似合う。どっかの国の姫っぽい。超カワイイ」



三連の褒め言葉。本当は「食べちまいたい」まで言いたかったんだが、抑えておいた。

ボンッと音がしそうな勢いで、
メッシュと同じくらいの赤さに彼女の顔が変わったから。

そして「ば、ば、ばばばばばばっかじゃない!」なんて上擦った声で言って、
またくるりと背を向けてしまう。

彼女にゾッコンだと自覚してからのオレは、こんなこと言うの別に初めてじゃないんだが。

(ちなみに、自覚したのは出会って数時間後・・・結局は一目惚れってやつだ)

どうやらいつまでたっても慣れないようだ。

そんなリアクションが見たくて言ってる、ってのも本当。

まぁ本音だっつーのも本当だけど。



「似合ってるよ」



立ち上がって彼女に近付き、彼女の頭についたもみじの葉を払う。

俺のプレゼント台無しにする気かこのやろう。

なんて、木にヤキモチ妬くオレ・・・自分がこんな独占欲強いとは思わなかった。

彼女は恥ずかしそうに上目で俺を見て、
「ありがとう」とコスモスに負けないくらいの満開の笑顔を見せてくれた。

その笑顔を守りたいと思った。





こんな日が毎日続くと思っていた。

一日中一緒にいて、

そして少し名残惜しいけれど別れて、

夜は

キミの声を、

笑顔を、

拗ねた顔も、

後姿を、

思い出しながら。

夢に出てくるといいな、なんて思う。

そしていつか、彼女はずっと俺の隣にいるようになるんだ。

朝とか昼だけじゃなくて、

夜も、

夢見る間も、

ずっと。



女々しくたって、これが“コイ”ってやつなんだ。

そのキモチばかり追いかけて、

オレは何一つ分かっちゃいなかった。