こんなくだらない言い合いすら、彼女となら楽しくて。

一瞬は本気で腹が立ったけれど、仕方が無いから隠してたプレゼントを出すことにした。



「なぁ、目瞑れよ」

「え?」



突然のオレの言葉に、彼女は目を瞬かせる。

それから赤くなって戸惑ったように視線を泳がせるから、その思考が読み取れてオレは喉でクツクツと笑った。



「バーカ。何想像してんだよ」

「なっ!!何も想像してないわよ!!」



彼女はより真っ赤になって、裏返った声で言い返してくる。

「ほんとに?」と下から覗き込むと、正直に「う」と詰まる。

それがやっぱりカワイイなぁと思っちまうオレ、重症。



「何もしないっつーの。だから目瞑れ」



もう一回言うと、彼女は赤い顔のままオレの目を見て、それからそっと目を閉じた。

・・・うわ、まつげ長。つーかマジで人形みてぇだな。

何もしない、と言ってしまった手前“しない”じゃなくて“出来ない”なのだが、
オレは必死に理性を抑えて“プレゼント”を彼女の頭に添えた。



「え?」



その感触に、一瞬で彼女が目を見開く。

オレは咎めるつもりなんてないのに、「まだいいって言ってないだろ」と笑った。

彼女は慌てたように湖に走りよる。

水面を鏡にしているんだろう、そっと自分の頭に触れていた。



「オレんちの近くで今日咲いたんだ。

秋の桜って書いてコスモスって花だって母さんが言ってた。

お前に似合うかなーって思ったんだけど、気に入ったか?」



彼女の背中に語りかける。

黒髪に、ちょっと濃いピンクが良く映えた。

ゆっくり、彼女が振り返り、そして小さく微笑んだ。