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「よっ」

「アンタまた来たの?」



あれから、1週間。湖で彼女と会うのは日課になっていた。

家族に湖のことも言わず、

(あ、ちなみにこっちと反対方面にも湖があって、兄妹はそっちで遊んでる)

もちろん彼女のことも言わず、
「出かけてくる」とだけ一言言い残しては毎日飽きることなくここにやってくる。

それこそ、彼女がこうして呆れた顔をしながら『また』と言うほどに。



そして彼女も、いつ来てもここにいた。

ただ、もう最初のときのような様子は無く、
オレの軽い挨拶に憎まれ口を叩けるほど元気になっていた。

必死に口説き落としたオレを認めてくれたのか、あきらめたのか、
はたまた、オレのしつこさに耐えきれなくなったのか、

まぁこうして一緒にいるのが当然の間柄にまでは進展した。



「なんか冷たくね?オレ泣くよ?」

「泣いちゃえば?」



彼女の隣に当たり前のように座りながら泣きまねをすると、降ってくる辛辣な言葉。

けれどすぐに彼女はふふっと小さく笑うのだ。



「嘘。来てくれて嬉しいよ」



と。

笑顔が見れるようになったのはつい最近。

やっぱり彼女はかわいくて、見るたびにときめいてしまう・・・なんてのも嘘じゃない。

じーっと見つめていて、オレはふと気付く。



「っていうかさ、ちゃんと飯食ってる?なんか痩せてきてね?」



あんなに艶やかだった髪も痛んできているような。

気のせいか、もしくは彼女が気にするかと思ってそっちは言わなかったが。

彼女は「あー・・・」と適当に呟いて空を見上げ、
それから「風邪引いたっぽくて食欲ないんだ」と悪戯っ子のように笑った。



「なんだ。でも、ちゃんと治せよ」

「いいね、バカは風邪引かなくって」

「おいこら、オレの心配返せ」