「よっしゃ、行こうぜ!」
「きゃ!」
彼女の気持ちなんて無視してその細い腕を掴んで引き上げた。
彼女は高く小さな悲鳴をあげる。
オレの方がバランスを崩すくらい、その体は軽かった。
そして俺の第一感想は、
「・・・ちっさ」
「大きなお世話よ!」
彼女のコンプレックスだったのだろうか。
俺の一言に、真っ赤になって今までに無い声のボリュームで言い返される。
今度はオレが驚いてぱちくりと目を瞬かせると、
彼女ははっと我に返って口を手で覆いながら視線を逸らした。
「───ハハッ」
そんな様子がなんだか可愛くて、声を出して笑ってしまう。
彼女は首をそっぽに向けたまま視線だけこっちにやると、
「変なヤツ」と小さく呟いた。
よく言われる、とオレも笑い返した。
こうしてオレは、本物の“宝物”を見つけた。
これが、オレと彼女の出会いで、全ての始まりだった。
ちなみに後から聞いた話だが、
このとき彼女は俺のナンパ的口調とデリカシーのない発言が気に入らなかったらしい。