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太陽が空にある時間が短くなり、木々を揺らす風が冷たくなり始めてきたある秋の日。

オレは、ここに引っ越してきた。

どちらかといえばど田舎っていう感じ。

それでも一応は『綺麗だ』って思える広大な自然が目の前に広がっていて、
口うるさいオレでも中々気に入る場所であることは確かだった。



「オレ、ちょっと出かけてくるわー」



適当に家族に声を掛けて家を飛び出す。

「早く帰ってきなさいよ」なんてセリフを背中に受けつつ、目の前にあった森に飛び込んだ。

こんな森は、写真なんかでしか見たことがない。

オレは、探検家にでもなった気分でわくわくしながら奥へと進んでいった。










30分ほど進んだところで、オレは湖にたどり着いた。

言葉では表せないくらい広い広い澄んだ水の湖。

紅葉した木々を写し、傾いてきた日を反射して眩しいくらいキラキラ輝く。

風が湖の表面を攫って、静かに揺れながらも雄大にそこに構える姿。

見た瞬間、考えるよりも早く「すげぇ」と呟いてしまったくらいだった。

(いや、もっと言葉はあったんだろうけど、オレの国語力は無いに等しい)

(だからこれはオレにしてみれば最上級の褒め言葉だった)



宝物を発見したようなキモチだった。



達成感と高揚感に浮かれながら、俺は湖を一周しようと歩き出した。

明日には、弟や妹も連れてきてやろう。

そう思っていた・・・のが、ほんの1分ほど前のこと。



今、俺は固まっていた。



「何してんの?」



目の前に見知らぬ女が一人蹲っていたからだった。

小柄な体と、艶やかで長い黒髪。少しだけ、赤のメッシュが入っている。

おそるおそる、それでも迷わずに声を掛けると、
女はゆっくりと顔を上げて、そしてぎこちなくオレを見た。

稀に見る美人だった。

でも、その目はどことなくうつろで、何も写してないように感じた。



「よぉ」



と挨拶してみる。(あれ?順番逆か?)