「血?あーほんまや。」

彼女に爪でひっかかれたらしく、複数の筋になった傷跡から血がリアルに流れ出ていた。

「手当てしないと・・・」

「悪いな。変なとこ見せて。あとでお詫びさせてな。」

「こんな状態でお詫びだなんて、私も原因をつくったほうだし・・・」

「何言ってんねん。水沢さんは何も悪くないやろ。」

彼は手当てより先におまわりさんのほうを片付けてくると言って、一旦部屋を出て行った。1人になった私はいろいろ考えた。自殺行為をするくらい彼のことが大好きで手放したくないという彼女の思いと、一方でそこまで彼のことを思っていない私。昨夜の山下公園の出来事で気持ちはちょっと揺れ動いたけど、今ならまだ本気でもないし引くことができる。むしろ引いたほうがいい?誰かを傷つけてまで手にしたい恋ではないし、もしそうだったとしても巡り巡って今度は自分が傷つく番になる。誰も傷つけない恋なんてないかもしれないけど・・・私はベッドに横になりながら思いにふけっているうちに寝てしまった。わりと長い時間が経過して部屋に戻ってきた吉田さんに私は起こされた。

「ごめんな。疲れたやろ。」

「こんなときに居眠りしてしまってごめんなさい。」

「ええって、気にせんで。疲れさせてごめんな。」

「彼女は?」


「親に迎えに来てもらって帰ったで。」

「そう・・・私考えてたんですが、吉田さんは彼女のことまだ好きなんじゃ?」

「なんでや?」

「私が彼と別れたことに責任感じて自分も彼女と別れなきゃと思ってるんだったらやめてほしいなって。」

「それは関係ないで。」

「でも・・・」