彼女は一瞬部屋の中に踏み込んできそうになった。それを吉田さんは必死に力づくで押さえていた。

「中に入れてよ!女がいるんでしょ!」

「おらんって。」

「靴があるじゃない。」

「いた、これは友達の。おまえ本当に迷惑やって。話は今度ちゃんとするから今日は帰ってや。」

「私は女と話したいのよ!あんた騙されてんのよ!」

「だから騙されるも何も、付き合ってないし、ただの友達やって。」

「だったら会わせてくれたっていいじゃない!」

「お前には関係ないやろ!ちょっと外でようや。」

「いや!痛い!」

吉田さんは無理矢理彼女をつかんで廊下に出て行った。私は玄関のほうへ駆け寄り、ドアに耳を立てて話を聞いていた。

「私別れないわよ!」

「わかったから。今日は帰ってや。」

「いや!」

「そんなわがまな言うんやったらもう無理やわ。」

「あの女に乗り換えるんでしょ!」

「そういう言い方は彼女に失礼やろ!」

「やっぱりそうなんじゃない!」

そんな会話とともにドタバタという音が聞こえてきたので、私はドア穴から外を見た。すると、吉田さんは動く彼女を押さえるのに必死な様子だった。

「女に会わせろ!」

彼女は隙を狙って彼の手をふりほどきドアに駆け寄ってきてドアノブをつかんだ。私も必死でドアノブを押さえ、私たちはドアを引っ張りあった。

「隠れてんじゃねえよ!ヨッシーがほしければ正々堂々と戦えよ!」

吉田さんがすぐに彼女を押さえてドアが完全に開くのを防いだ。と同時に、私に鍵を閉めてチェーンをするように言ってきた。私は言われるがままの行動をしたあと、また覗き穴から外の様子を伺っていた。

「出てこないならヨッシーを殺すぞ!いいのか!」

そんな卑劣な言葉を並べ、彼女が本当に彼の首を絞めている姿が穴から見えた。

「オレは大丈夫やから絶対出てくるな!」

彼は私にそう叫んでいた。どうしよう・・・このままだと本当に殺されるかもしれない・・・私は警察に電話をすべきか迷った。