私はリビングからわからないよう2人の様子をのぞき、会話を聞いていた。

「朝からうるせえんだよ!今人が来てるから今日はダメだ。家に帰れ。」

「女でしょ!中にいるんでしょ!あわせてよ!」

「違うって。」

「昨日車で出かけていくところを友達が見てるのよ!」

「だから違うって。ほんと今は無理だから。話今度な。」

話途中のまま、彼のほうが無理やり戸を閉めた感じだった。当然納得しない彼女は、またドアをどんどん蹴飛ばし、開けろ!と大声を出した。土曜の朝、当然周囲の人が黙っているわけがなく、隣人からうるさい!と怒られた彼女は一旦退散した。

「今の彼女でしょ?」

「ああ・・・」

「今日約束してたんじゃないの?せっかく家にきたのに、追い返してかわいそうじゃない?私だったらもう帰るけど・・・」

「いや、いいんだよ。あいつの家はすぐそこなんだ。」

「すぐそこ?」

「ベランダから見えんねん。昨日俺らが車で出かけるとこアイツ見てたらしくて。」

「そ、そうなの・・ごめんなさい。私が泊まるなんて言わなければ・・・何でもないよって彼女に説明しよっか?」

「えぇよ。水沢さんには黙っとったけど、本当は俺ら別れ話はしてんねん。アイツが納得してなくて別れきれてないやけで。」
吉田さんは彼女一筋で、親公認のお付き合いで結婚するだろうと会社で噂されてたいただけに、私は驚いた。