「1時間くらいたってるかもしれんなあ。」

「早く起こして下さいよ・・・」

「なんでや。もったいないわ。」

「何が?」

私の顔を隠している布団を奪い合って2人でちょっとの間じゃれていた。でも結局吉田さんは何もしてこなかった。こんな状況であっても・・・彼女のことを思うからなのか、私が会社のコだからなのか、それとも私のことが好きすぎて何もできないのか(笑)。まぁ理由がどうであれ、いい人に間違いないのだろう。だって・・・欲を満たそうと思えばできたんだから。このことで私の気持ちがはっきりした。マナブとはやっぱり別れよう。だって世の中、体目当てじゃない男がいることがわかったんだから。そして私はマナブに話があると伝え、最後の食事の約束をした。

その日、いつもならどちらかの家の近くでたいてい焼き肉を食べるのに、こんな日に限って、マナブは銀座のちょっぴりオシャレなお店を予約した。私が話があると言ったから、何か察したのだろうか?とりあえずご飯は普通に食べて帰り際に話をしようと決めた。けれど、会話が全然はずまない。マナブが話してくる内容に一切興味関心がわかない。私はすでに別れたい気持ちでいっぱいで、表情に出てしまっていた。

「みすず楽しくなさそうだね。」

マナブにも気づかれた。

「ごめん。帰る時に言おうと思ったんだけど今言うね。」

「なに?別れ話なら聞かないよ。」

「・・・」

「え!当たっちゃった?」

彼の目を見ると涙ぐんでいたので、私は一瞬答えに悩んだ。