20分くらいでマナブは来たけど、ただ気まずい空気が流れるだけだった。

「みすずが嫌じゃないなら警察に届けたほうがいいと思うけど・・・」

「嫌じゃないってどういう意味?」

「警察に色々聞かれて思い出すこともあるだろうし。」

「・・・」

少し考えて、やっぱり家を知られてることがすごく恐怖だったので警察へ電話をした。警察が来たときは事件時刻からほぼ1時間経過していて、それじゃ犯人も周辺にいないし捕まえられないと逆に怒られた。念のため被害届けを出しに警察署へ移動したけど、そこではまるで私が犯人?という扱いのヒアリングや写真撮影、しかも正面、斜め横の姿など、刑務所に入れられる犯罪人のようだった。そして帰りに別部屋で待っていた学が私にこう言った。

「署長と友達みたいに話ちゃったよ〜。名刺もらったんだ。」

かなりうきうきした口調だった。

「俺たちの仲がうまくいってるか聞かれたよ。」

「なんで?」

「いや、その・・・別れ話をしてる男女が、女が別れたくないからと彼氏の同情をかうために襲われたと嘘つくことがよくあるらしい。みすずはそうじゃないって言ったよ、ちゃんと。」

頭にきた。署長にじゃなくマナブに。少なくとも別れたいと思い始めてるのは私のほうだし、仮にそういう質問を受けたとしても今私の気持ちを考えれば伝える必要はない。彼に失望した。