鍵が開いた!と思った瞬間、私は男に後ろから押えられた。と同時にびっくりした私はこう叫んだ。

「うぉーーーーー!!!」

いざ遭遇してみれば、よくテレビで見るような黄色いかわいいキャーという叫び声なんかじゃなく、おっさんのような低い太い声しかでなかった。それも最初の1回きり。助けてと叫びたいのに声が出ないまま、私は痴漢行為を受けた。でもさっきの太い叫び声が近所に響き渡ったおかげで、深夜にもかかわらず1軒家とマンションの隣の部屋の明かりがついた。すると男はその明かりに反応し、痴漢行為をやめるとスキップしながら逃げて行った。私はすぐ玄関に入り、鍵を閉めると恐怖心をはじめいろんな思いがこみ上げてきて玄関に座ったまま泣いた。近所の人に私だってきづかれただろうか?スキップなんかして逃げてってくやしい!そして何より、家がバレてしまったという恐怖心からしばらく動けず、マナブに電話をした。

「マナブ?起きてる?」

「起きてるけど、どうしたの?泣いてるの?」

「家の前で痴漢に襲われた。」

「えっ!?うそでしょ?」

マナブは少し笑い気味に返事をした。

「なんでこんな内容を笑えるの?」

「ごめん。で、大丈夫なの?今どこ?」

「玄関」

「家もバレちゃったし、怖くて1人でいれないの。私がそっちに行きたくても、まだ近くにその男がいるかもしれないと思うと外にも出れない。マナブ来てくれない?」

「え!もう電車ないよ。」

「そういう問題?」

「わかったよ、電車あるか調べるから一旦電話切るよ。」

「うん。」

タクシーで来ても4000円くらいの距離なのに、全く心配する様子もない彼に私は幻滅した。すぐにコールバックがあった。

「電車最終間に合うから今から行くね。」

「うん。」