ふわり、と地面に着地すると人の気配のない閑散とした建物の中に足を踏み入れる。
昼間の盛況ぶりを思うとそこはとてつもなく寂しいところで、しかし無造作に配置されている美術品は命が吹き込まれているかのように、月光に美しく照らされていた。
毎回仕事を終えた後、自分がこうして再びそこを訪れている、ということに気づいている者は一人でもいるのだろうか――?
「…ふっ」
自分は何をしているのか、危険―risk―を犯してまでそうする理由は何なのか、決して油断しているわけではない自分の不可解な行動を自ら嘲笑う。
そして今日も、誰にも邪魔されず一人の時を過ごす――筈だった。