仮面の下で冷静に隙を窺う。


そして遂にそれを見つけると、圧倒的な運動神経で数十人という防御の中のとりわけ薄い部分を通り抜け、あるいは踏みつけながらその大袈裟な包囲を突破した。


直後、逃がすなという叫び声と共に大量の警官が追ってくる。


それ以外の手立てを考えていなかったのか、風を切り、駆ける先に人の気配はない。






罠にかけるにしても、敵が宝石を盗むのを黙って見過ごすというのは考え物だ。その前に行動を起こさなければ大概は逃げられてしまう。


敏捷な動きで追っ手を振り払うと、レスタード警部の失策に溜息を吐いた。


この程度で私が捕まるわけがない。


通りを走っていく警官たちの姿を見下ろすと、再び先程の美術館の方へと目を向ける。