「正に“思い出したくない記憶”ってやつやな!」


郁の的確な表現に、聖河がそうだなと苦笑する。



「梓、柚枝、郁……そろそろ帰った方がいいのではないか?特に梓は、兄が心配していることだろう。」


「柳兄は別に放っておいても大丈夫だけど……」


「梓ちゃん!聖河君と一緒に居たい気持ちはわかるけど帰ろうよ?夜道は危ないから!」


茶化すような口調で言い聞かせる柚枝。



「か、勘違いされるようなこと言うの止めてよ、柚枝!帰るから、これ以上余計なこと言わないでよ?」


梓は頬を赤くして、怒ったような口調で返した。



「ほな、聖河はん。また来るわ!」


「またね、聖河君。」


「学校始まるからたまにしか来れないけど……また気が向いたら来てあげるから。」


郁、柚枝、梓の順で挨拶をし、三人は病室を出て行く。