「千与、父上はそなたを心配しておられるのじゃ。わかるな?」
俯く千与に優しく話し掛けたのは千与の母、お雪。
「はい、わかっております母上…」
「刀は人を斬る道具が故、父上は千与に触れてほしくないのだ。」
「…はい。しかし母上、千与は強くなりたいのです。」
「千与は、女子じゃ。戦わなくてよい。だから強くならなくてもよいのだよ?」
その言葉にまた、千与の袴を握りしめる力が強くなる。
戦に行かなくとも、千与は強くなりたい。誰かに守られるだけの軟な女子、そんなのは嫌じゃ。
武士の娘。だからか、千与の強くなりたいと願う想いは一塩だった。