震える彼女の肩を、由親はそっと抱き寄せた。

「っ、なにを、」

「千与が泣いておるのにひとりになどできるものか。」

彼の優しさが、彼女にとってどれほど辛く残酷なことか。

いっそ、突き放してほしい。

いっそ、憎みたい。

いっそ、…忘れてしまいたい。由親の存在そのものを。

それができない、このぬくもりが、憎い。

そのぬくもりを突き放せない己自身がそれ以上に憎かった。