一歩、また一歩と進むたびに思い出が鮮やかに蘇る。

幼い頃、この辺りでよく喧嘩をした、この川でよく一緒にびしょ濡れになりながらはしゃいだ…その度親から叱られて―。

尾張には、千与と由親の思い出が多すぎる。

その今まで時間を共有してきた最愛の人が、もう己から離れていく。

覚悟はしていた。…いや、彼女はしていると自身に言い聞かせていただけで、実は全く出来てはいなかった。