涙も出はしなかった。
深い絶望が、彼女にのしかかる。

千与は、そっと立ち上がり外へ向かう。

「千与っ。」

「すぐ、戻って参ります故…」

呼び止めた母に千与はそう作った笑顔を向けて草履を履いた。

今にも消えてなくなってしまう程に脆く、儚い娘…そんな我が子をただ母は彼女の手を握ることしか出来なかった。

「…そなたの好きなものをこしらえる故、早う帰ってくるのだぞ。」

「―はい。」