父が戦へ向かうのはいくらか免疫があるものの、由親の参戦は今回が初めて。きっと、彼女は毎回、涙を流すだろう。
人知れず、枕を濡らす夜が延々と続くことを千与は感じていた。

今隣にいる愛おしい人の命を惜しいと思う。もちろん父の命も惜しいけれど、今千与の心を支配しているのは他の誰でもない由親なのだから。

「由親、出陣はいつじゃ?」

「…明日じゃ。」

「―明日、」

明日の今頃、隣にいる彼の命が危険に曝されている。そう思うと胸が裂けそうだった。