そう千与が伝えると信長は小さく微笑みを浮かべた。


「…一刻も早うその時が訪れることを千与は切に願うております。」

千与は去る信長の後ろ姿を眺めながら、そう呟く。
信長の天下統一を、平和をただ祈った。

「千与」

振り返ると、由親が立っていた。

「…由親、」

由親は千与の隣に腰を下ろし、千与を見た。

「そちも座らぬか?」

千与は小さく頷き、座る。そのときにふんわりと風が優しく吹いた。

「…由親。そなたも戦に行くのだな。」

しばらく流れた沈黙を破ったその声。

「ああ。信長様のお力になれればよいのだが。」

「―由親ならそのようにならむ。」

本当は戦なんて行かないでと伝えたいのに、彼女は言えなかった。武士にそんなこと言えるはずがない。

武士にとって戦は全てだと千与はよく知っているから、そんな困らす本音は言えなかった。