「無血で解決は誠にできぬのか?」

ぽつり、優しく頬を撫でる風にさえも掻き消されるような小さな声で、千与は呟いた。

彼女は、あの土手にいた。草原に大の字になり、空を眺める。空に浮かぶ雲は、こっちの気持ちなんてお構いなしでゆっくりと己のペースを保っていた。

「―そなた、なに奴?」

千与は振り返ると、言葉を失った。
話し掛けたのは織田信長だ。

「…千与、でございます。信長殿。以後お見知り置きを。」

淡々と話すけど、千与の片手は緊張で震えていた。

「千与。無血終戦なぞあるまい。」

「信長様っ、」

「そなたの言いたい事柄はよう知っておるぞ。」


信長がにやりと口角を上げた。