そう俯き顔を上げない千与にジョゼは優しく、まるでそよ風のように優しく語りかける。

「そなた様のそのお方を想う横顔は誠に美しい、と私は思うのです。この空に架かる虹のように儚く美しい。
どんな高貴な衣を纏う后や姫よりも、そなた様のそのお気持ちは輝かしいです。」

ぽたり、静かに千与の頬を伝った温いモノは草を潤す。
ジョゼの言葉が、千与の突っ掛かった何かを優しく解いたのだった。

「私たち人間のみが知恵を持ち、言葉を持っております。私たちは幸運にも人間なのです。その言葉を使わぬのは勿体ないですよ?」

「それは…千与にこの想いを告げよ、と言いたいのですか?ジョゼ殿。」

「殿だなんてお止め下さい。私はまだまだ伴天連の端くれ故ジョゼでいいですよ。」

「ならば、ジョゼ。そなたは千与は何をしたらよいか…教えて下さるか?」

すると返事の代わりに笑顔をジョゼはあげた。