「そなたの瞳は誠に美しいの。」

そう千与は微笑む。宣教師の彼は思わずぱちくりとその瞳を真ん丸にする。
そんな言葉、今まで言われたことがないので驚くのも無理はない。

「さ、左様ですか?」

「はい。この空のように澄み切り、あの海のように深い信念を持っておる。千与はそなたのその瞳と同じ瞳をしておる人を知っておりまする。そなたの瞳を見ると、そやつを思い出します。」

千与はそう言い空を仰ぐ。その空に、愛しくて堪らない幼なじみの姿を描いた。柔らかな笑顔を浮かべる由親への想いがまた募る。

「そのお方は…、」

「生きておりますよ。」

不安げに尋ねたジョゼはその答えにホッとした。まるで、自分と同じ瞳をしたその人はもう天に召されたかのような口調だったから。

「―しかし、そやつは武士故、いつか…千与の前から去るやも知れぬ。千与は、それが誠に、恐ろしいのじゃ。…由親を失いとうないのです。」

ぎゅっと拳を握った。いつか、その漠然とした未来に恐怖を感じる。