「―見よ、由親。今宵は美しい星じゃ。」
話題を変えようと、千与は空を指差す。
「誠に、美しいな。」
「あの星、他のより煌めいておる。」
月に寄り添うように瞬く星を指差し、千与は微笑んだ。どこか悲しげな、笑みだった。
隣にいる由親といつか離れるときが訪れる、そう想像するだけで千与の涙腺は緩む。
「父上は、いつも生きて帰ってこられる。それは幸運なのだな。」
「ああ、そうじゃ。」
ふと触れる二つの手。ビクッと反応するうぶな二人。
「す、すまぬ由親!」
「私こそ…すまぬ。」
謝る二人の頬は暗闇で見えないけれど真っ赤だった。
気付いたらゴツゴツと骨っぽい大きな手をしている由親に、異性だとまた認識して、好きだと再認識して、心臓の拍動が速まる千与。
気付いたら片手ですっぽり収まるまでの小さな手をした千与。幼い頃は同じくらいだったのに…
その小さな手を守りたい。
そう願わずにはいられない由親。