「写真集できました。あげます」
そうぶっきらぼうに差し出された、A4判より少し大きめの上質なハードカバー。
状況を把握できないままそれを受け取ろうとした、私の手は。
どういうわけか、彼に、がっしりとつかまれた。
突然のことに私は、ひっと喉を引きつらせ、でも彼はそんな私を気にも留めず、
つかんだ手をまじまじと見つめて、
「あなたの手はとても綺麗です」
と言って、近くのショーケースの上に私の手を押しつけると、
それを相変わらず首から下げていた一眼レフに熱心におさめ出した。
呆気にとられてされるがままになっていたら、
彼はふと思い出したようにジャケットの内ポケットから一枚の紙を取り出して私に握らせて。
「これもあげます」
それは、青い青い空ばかりの写真。
「あなたは青が好きだから」
さも褒めてほしそうに、彼は胸を張った。