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はじまりは、女友達からの紹介だった。


アーティスト系の専門学校に通っていた彼女は、卒業制作で写真集を作ることになり、

モデルの衣装について私に相談を持ちかけてきた。


私は高校を卒業してすぐにファッション系のセレクトショップに就職していて、

そこはオーダーメイドも承っているから、白羽の矢が立ったのだ。


物作りが好きな私は、二つ返事で協力を約束した。




そして打ち合わせのため、友達宅で開かれた食事会。


そこで顔を合わせた製作チームの面々の中に、彼はいたのだ。




首から下げた一眼レフを手放さず、たまに思い出したようにシャッターを押したり、何かを観察していたり。


当時の彼はまだプロのカメラマンではなかったけれど、大きな賞をいくつも獲得し、

ときに収入を得るような依頼もこなしていて、学生の間では有名な存在らしかった。


たしかに、彼のまとう空気は独特だった。


でもそれは、どこまでもマイペースで、

心ここに在らずというか、危なっかしいというか。


とても一般企業ではやっていけないようなそういう雰囲気で、

すでに社会の荒波に揉まれていた私は彼に決していい印象を持たなかった。


聡明で、行動力があって、頼りになって。


そんな人がいいと、私は思っていたのだ。