あたしは居間に戻ると、バックとコートを投げ捨てながらキッチンに向かった。


水を飲んでいるとユキが戻ってきてあたしの隣までやってきた。


あたしの髪に顔を近づけるユキ。


「俺の知らない男の匂いがする。」


「お客さんで香水つけてた人がいたから。」


イライラしながらもあたしは、そういえば橘さんは変わった香水を付けていたなと思った。


「…ふーん。ミリ今日遅かったね。」


「アフターだったから。」


そう言ってあたしはマフラーをキッチンに投げ捨て居間に戻った。


「なんかミリ機嫌悪い?」


「別に。」


「嘘。絶対怒ってる。」


マフラー、コート、バッグとあたしが投げ捨てたものを拾いながらユキはあたしに近づいてくる。

「だから、そんなことないって。」


あたしの荷物が床にそっとおかれる。


「嘘つくなよ。何怒ってんだよ?」


いつになく真面目な表情のユキにあたしはたじろいでしまう。


後ずさるあたしにユキはどんどん近づいてきてとうとう壁際までおいつめられた。


逃げようにもユキの腕がそれを許さない。


「ミリ。」


ユキはそっとあたしの名を呼ぶ。


前髪にユキの甘い吐息がかかるこの距離にあたしは目の前がクラクラした。