「はいはい、えーと後は…本くらいか」
「それ、なんなの?」
ローブに袖を通してみると不思議なくらい体になじんだ。
「お、似合ってる似合ってる…コレはだな依頼人の言葉が書かれるもんだ…日記みたいな」
「日記?」
「ああ、今は真っ白だが依頼人の心に入る前と後…普段人前で出してる人格が書く本音と嘘が書かれるモンだ」
「…本音と嘘?」
ジェイドは身振り手振り説明し始めた
「えーと…だな、例えば普段良い人と言われている奴が言えないホントの気持ちってのがあるだろ?―――めんどい…どうせだから初仕事行って確かめて来い」
が、すぐにやめた。
「また?初仕事って…僕一人で?」
「まさか!初仕事はついて行くさ」
「初仕事は?」
「コレは一回行ってしまえば後はガイドなんて要らない仕事なの…サポートはするが一回だけな」
「…不安だな…」
「最初はな…なれれば大丈夫だよ」
口元だけで笑った。
「さてと…そろそろ行きますか…ほれ、行くぞ?」
立ち上がり汚れをはらってドアを開ける。
「マイペースだね」
「まあな」
ため息をついて僕は手の平にある鍵を見つめた。
「…ま、なるようになるかな」
今はもう考えるのはやめておこう…コレから初仕事とやらが始まるならそれが終わってからまた考えよう…。

 外に出ると相変わらず大きな月が輝いていた。
「……ねえ、この先行ってもまた元に戻るだけだよ?」
「だから、鍵使えば良いんだって…とりあえず今は初仕事場に直行ー」
僕の前を歩くジェイドはスタスタと進んでいく。
そして急にピタリと止まった。
急に止まったせいでぶつかりそうになった。
「…っと、ここ?…木しかないけど…」
「んー、アッシュ…さっきの鍵だしてこの辺に挿してみ?」
木の穴を指指し言った。
「鍵?」
僕は先ほどの鍵を出して木の穴に挿してみた。
「…なにも起きないってか…大きさがあからさまに合わないし」
「回してみ」
「回す?こう?」
鍵を挿して回す動作をするとカチャリ…と音がして木は形を変えていった。