ジェイドは僕の目の前の空気を親指と人差し指でつかみ、何かを引き出すような動作をすると翡翠が柄にはめ込まれた見事な銀細工の細身の鍵が現れた。
「…どうやって出したの?」
「見た通りさ。お前もやってみ?」
「いや、やってみろって…」
「説明めんどい」
「むぅ…」
半信半疑で僕は空気を掴み何かを掴んで引き出す動作をしてみた。
「…?なんだ?」
引き出そうとすると何かをつかんだ感触があった。
手を止めてジェイドをみる。
「そのまま引き出せって」
微笑を浮かべ僕をみる。
ゆっくり引いていくと鍵が現れた。
ジェイドとは違い何の細工も無い鉄で出来た錆かけの鍵だった。
「…ずいぶん違うな」
ジェイドが鍵を見て言った。
「お前イメージ貧困だなぁ」
「え?」
「鍵は持ち主のイメージで形になるんだから…もう一回、今度はもうちょいまともなの創造してみ?今後、その鍵でお前は仕事するんだから…」
「仕事?そういえば、最初もそんなこと言ってたね…一体なんなの?」
「説明はするから、ほれ、もう一回やってみ?」
僕の手から鉄の鍵を取り指でポキリと折ると鍵は粉となり消えてしまった。
「ちょ…」
「これは問題ないから平気」
「あ、そう」
「ささ、やってみ?」
「……」
僕は目を閉じて心の中で鍵をイメージした。
あまり飾りはいらないけどどうせならキレイな鍵がいい…。
僕の瞳の色はジェイドみたいにキレイじゃないけど…そういえば外にいた黒い蝶、キレイだったな…羽が月の光で透き通って…。
「イメージしたらそのままさっきみたいに引っ張り出せ、よーぉくイメージしてな」
「……」
ゆっくり僕の鍵を引っ張り出した。
今度は黒曜石のような黒い鍵が出てきた。
柄は蝶が羽を広げた形になっている。
「ほー…真っ黒だが嫌な黒ではないな」
「これでいいの?」
「ん、上出来」
「これをどうするの?」
ジェイドは口元で笑みを浮かべ椅子から立ち上がる。
「さーてと、では行こうか」
「は?」