「ほら、そこの子も急ぎなさい」
「えっ?……あっ!」
見上げた図書館員にそう言われ、あたしは自分も急がなきゃいけない立場にいたことを思い出した。
「ご、ごめんなさいっ」
勢いよく頭を下げて、小走りをするように急いでカウンターへ向かう。
あたしは貸出しの手続きを終えて、もう一度図書館員に頭を下げた。
館内にはもう人気はなくて。
さっきの男の子の姿もなくなっていた。
同い年ぐらいかな?
この図書館にはよく来るのかな?
なんて、今さっき会ったばかりの異性に興味を持っている自分自身がすごく新鮮だった。
また会いたいな、なんて。